ガソダム00非公式ファンブログ
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ユニオン中心!ビリグラ。時々アレハレティエとハムサワ。
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サワロクSSSです。 「ん?俺は幸せだぜ?」 そう言ったヤツの目がやけに優しかったので、俺にはそれが嘘だとわかった。この男は嘘をつくのが上手い。上手い、というより、嘘をつきすぎてそれが本当になり、本当のことを話すときひどく不自然になる。その歪みはとても小さくて見つけにくかったが、幼い頃を知る俺には容易かった。 「お前がいるし、な」 それさえも嘘だと分かると急に胸が冷えた。氷を心臓に突っ込まれた気分だ。目の前の男が俺をいっさい必要としていないのではないか、という不安にかられ、それが真実だと認めたくなくて小さく頭を振った。ヤツはそれを、ヤツの言葉への否定と受け取ったようで、慌てて俺の目を覗き込んだ。至近距離で見詰め合う。ヤツのきれいな瞳に俺が映る。 「パトリック、どうし…」 「お前は、バカだよ」 どうしてだろう。怒鳴ってやるくらいの気持ちだったのに、喉から絞り出したそれは酷くやわらかい音になった。やるせなかった。自分が救えないのだったらどうか、誰でもいい、いや本当は自分が救えればと思うけれど、それが叶わないのなら、神様とやらに祈ったっていい、誰かこの男を救ってくれ。 「ばかだ」 もう一度なんとか言葉を吐き出す。きょとんとしているヤツを、力の限り抱きしめた。苦しい、と言って身じろぐヤツを閉じ込めるように腕に力を入れる。おとなしくなったので、茶色い癖っ毛を乱暴に撫で付けた。 「泣いていいんだよばか」 幸せになれない、なりたいと、叫んで泣けばいい。誰が悪いのか叫んで憤怒して、大切なものを返せと詰ればいい。俺でいいなら、思う存分にあたればいい。それができない不器用な男だ。おそらく俺だけではない、誰にも素顔など晒せない、不器用でばかな、大人子供。 「泣けよ、愛しているから」 俺はこんな言葉しか持たないけれど、ヤツの心をこじ開けるバールの取っ掛かりにでもなれればいい、と思う。誰かが乱暴に、残酷にヤツの殻をぶっ壊し、膿んだ傷を啜り泣かせてやれればいい。そのとき初めて、ヤツは幸福とは何かを知るだろう。その役目が自分ではないことが悔しくて歯がゆかった。 「…パトリック、ありがとな」 抱き込んだ顔が、せめて微笑んでいないことを祈った。 PR 2008/03/16(Sun) 21:23:34
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