ガソダム00非公式ファンブログ
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ユニオン中心!ビリグラ。時々アレハレティエとハムサワ。
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有心論でビリーの妄想をしたらノンストップ暴走列車でした。 何時死んだっていいと思って惰性で息をしていたとき、僕は君に出会った。 『あの事件』の後、クジョウと僕は次第に顔を合わせなくなり、卒業と共に彼女は姿を消した。不器用で大人になりきっていなかった僕らは、疵を隠すことにばかり必死になり、そうしてその努力が実り歪に疵を塞いだ。癒せない空虚を抱えたまま、彼女はどこかに消えることを、僕はあんなに嫌っていた軍に入ることを決めた。僕の方が幾らか前進したのだと信じていたが、真実がいったいどうなのかは分からない。そもそも真実なんて無数にあって、それが酷く苦しくてもどかしくて、僕はただひとつの真理なんていう幻想を求めて手を伸ばし続けていた。ありはしない。何事にも答えなんて。だったら僕はこれから何をして生きるのだろうと思った。教授は知ることの楽しみを教えてくれた筈だった。知ることが苦しい僕にはもう、なにひとつ楽しいなんて思えなかった。知るたびに一つ、行き止まりが増えるだけだ。少しずつ自分を袋小路に追い込んでいく。 壁を高く築き、迷路のような道をどんどん塞いでいく。いつ詰みになるのだろうとぼんやり考えていた。詰みになったら、一体どこへ行くことができるのだろうと。 僕はいつの間にかMS開発の深部に携わるようになっていた。新型MSのテストパイロットを選出するのだと言われて、久々にハンガーに赴いた。 そこで、グラハム・エーカーに出会った。 彼は非常に優秀なパイロットだった。能力は間違いなく頭抜けている。身体能力、技術力、勘、運、統率力、カリスマ性、どれをとっても特別だった。彼は光を放つことのできる人間だった。恒星だった。 彼はとても眩しい笑顔を僕に向けた。それは所謂輝かんばかりの笑顔ではなくて、不敵に口の端を歪めるようなそれだったが、僕はそれがとても好ましかった。見上げられているのに見下されている、いや、俯瞰されているような感覚。全てを下し、支配する目だった。好戦的で野生的な内面を、紳士的な皮一枚の向こうに潜めていて、それが虹彩から透けて見えるような。生きる目だ、と思った。 突然、心臓が脈打つのを感じた。走った訳でもないのに、鼓動がまるで耳元で聞こえたみたいに大きく響いた。彼が僕の心臓を素手で握ってしまったような気さえした。 「私に翼をくれ」 彼は、初対面の僕に向かってそんなロマンチックな言葉を投げかけた。面食らっている間に、彼は僕の前に左手を差し出してくる。白手袋は外したらしく、色は白いがごつごつとした大きな手が見えた。 「貴方の開発した機体に私が乗ろう。必ず次世代機の第一候補にしてみせると約束する。だから翼を私に任せてくれないか。誰よりも早く高く翔けることのできる翼が欲しいのだ」 「…それは君を殺すものだよ」 「ああ」 「君はその中で死ぬのだよ」 「ああ」 「君を僕が殺すの」 「そうだ」 「どうして僕なの」 「泣きそうな顔をしていた」 「なんだい、それ…」 「覚えておられないか。エイフマン教授の授業で優秀なレポートを拝見した際に貴方の名前が。あまりに興味深かったから、貴方に質問しに行ったことがある。その頃の貴方はとても魅力的だった。今日お会いして驚いた。まるで死人のような顔をしておられる。私はまた貴方の笑顔が見たいのだ。それでは理由にならないかな?」 「…全く理由にならないよ。困ったね。とてもじゃないが信じられない。でも…」 でも、僕は久しぶりに、本当に久しぶりに笑ったのだ。それは、グラハム・エーカーの所為だった。それだけは間違いなかった。彼は能力値だけ見ればこちらから頭を下げてでも頼みたいパイロットであったし、彼からそう言ってもらえるのなら有難い。パーフェクトだ。僕は彼の手を、握った。強い力だった。 理由は美しい言葉で飾られて深部まで窺えなかったが、それはもういい。もしかしたら、本当にもしかしたら、だけど、彼はただただそう思ったからそう言っただけなのかもしれなかった。彼のことは今でも測りかねているから、真実はよくわからない。 そうだ。彼に出会って、分からないままの真実を愛しむことも覚えた。声を上げて泣く事も。縋りついて快楽を追うことも、笑いすぎて涙が出ることも。全速力で走ればとても苦しくて、でもその後感じる芝生はとても心地いいのだとか、汗を冷やす風は快いとか。 そして、そう。詰みになったときにまだ行ける場所があるということも。 空だ。 高く飛翔する、空へ。真実も真理もあるかもしれない、ないかもしれない。ただ空を探したことは僕にはなかった。だから彼が探すことができるように僕は翼をつくる。彼が生きる限り僕は生きる。彼が僕の心臓を掴んで動かす。彼の姿がこの目を移ろわせる。彼の言葉が僕を泣かせ、笑わせ、傷つけ、そして救う。僕の手を引いて外へと連れ出し、空の青さを見せて笑う。明日の空を見る為に生きろと言う。僕は信仰を持たなかったが、彼だけは信じた。可視で地上で会える非常に人間味のある神がいるなら、僕にとってそれは彼だった。 僕は、生きていく。生きて、笑う。それがぼくのかみさまとの、約束。 PR 2008/02/19(Tue) 04:49:30
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