ガソダム00非公式ファンブログ
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ユニオン中心!ビリグラ。時々アレハレティエとハムサワ。
ネタバレ配慮皆無、週遅れなし。
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別名反逆のビリー。もしもビリーがトリニティサイドだったら…orz
18話見て勢いで仕上げた…(ちょ、エントリーシートは… こうならないことを心から願って。 グラハム視点。乙女注意報。ビリーにイメチェンさせてみました← T様に捧ぐ。 『君に譲れないものがあるように、僕にも譲れないものがある』 『…強情だな』 『君ほどじゃないさ』 裏切者を追い詰めた先は、あろうことか通いなれたラボだった。逃げ回って行き着いた先がここだというなら、一体何故こんなことをしたのだ。そう問いたかった。走っている最中床に向けていた銃を、その男に向ける。男は、あんなに長かった亜麻色の髪を、何を思ったかバッサリと切り捨て、伊達だった眼鏡も外していた。そこに見慣れた温和な表情はない。冷たささえ感じる無表情で、男は此方を見ていた。素早く白衣の懐から銃を出され、ゆっくりと構えられる。その間、動けなかった自分に呆れた。何をしているのだろう。今この瞬間、男を捕らえねばならないというのに。私を、仲間を裏切り、そして自らの恩師さえ殺したこの男をどうして許すことができるだろう。 「何故だ」 搾り出すように、それだけが声になった。男は銃を少しも動かさずに此方を馬鹿にしたような目で見ている。 「何故って。そんなこと聞かれても困るなあ。元々こうなることさえ想定した上でユニオンに潜り込んだんだよ、僕は。君こそどうしてそんな顔をしているんだい」 茶化されて逆上しそうになり、必死でそれを抑えた。男が自分に冷静さを失わせようとしていることは明白だ。歯を食いしばって耐える。構えた銃の先が震える。信じたくなかった。私は男のことを信頼していたのだ。撃つのだ。撃たねばならない。それは分かっている。でなければ、ハワードや教授、命を落としたユニオンの仲間たちが浮ばれない。せめて動けないように、足の腱を―――駄目だ、歩けなくなる。そうだ歩けなくさせるべきなのだ、なのに、何故、この左手は、この指は、動こうとしないのだろう。 そこに突如、鋭い電子音がした。一瞬びくりとして、衝撃で引き金を引いていないことに安堵する。すぐさま、安堵した自分を嫌悪した。どうやら音源は男の持ち物であるらしい。白衣の胸ポケットに、着信かなにかを知らせる淡い色の光が見えた。 「撃たないのかい?」 「…っ…私にお前を撃てというのか!?」 思わず叫んだ。男は、一瞬だけ、いつもの、そう、見慣れたあの困ったような笑顔を見せた。仕方がないねえ、と言いながら私の望みをいつだって叶えてくれた、あの笑顔だ。卑怯だ。撃てる筈がない、男が裏切るだなんて何かの間違いだと思いたかった、だってあんなに満身創痍だったのに、その身体をおしてまでフラッグの整備をしていた男が。 「撃たないと君も処分だろう。ここまで僕を追い詰めておいて、取り逃がしましたじゃ済まされない」 男は静かな声で言った。分かっている、と半ば絶叫するが、男は鼻を鳴らすばかりだった。薄っすらと笑ってさえいる。 「じゃあ撃ちなよ」 男が言った言葉が信じられなかった。だが、その通りだ、撃てばいい。男はそれを望んでいる、そんな気さえした。だが私には引き金が引けない。ハワード、どうか許してくれ、私はこんなにも弱い。信じた男に裏切られる、それがどれ程の苦痛か私には分かっていなかった。 内通者、MSWADの基地を襲わせた張本人、私が、ずっと殺してやりたかった男。その顔を混乱の中、じっと見つめた。鳶色の目が、柔らかく溶けるのが好きだった。眼鏡の奥で穏やかに笑う非戦論者、その心を護りたいと願っていた。私と共に歩んでくれると信じて疑わずにいた。 「追っ手が来るよ、グラハム」 久しぶりに、その名を呼ばれた。最近、呼ばれることが極端に少なかった名前だ。どうしてだと、疑問に思わなかった訳じゃない。けれど理由を知るのが酷く怖かった。だから、基地で会うことが多いせいだと言い訳をつけて黙っていた。男にスパイの嫌疑がかかっていたのを知っていたから。 「どちらかが撃たなきゃならないんだよ?」 でなければ二人とも死ぬ。私にもまた、スパイの疑惑は向けられているのだ。男に言われるまでもなく分かっていた。子供に言い聞かせるような口調に腹が立つ。この男を徹底的に調べていたのなら、諜報部も私との関係に気付くに決まっている。ここで撃たなければ私もまた反逆者、抹殺されるだろう。そんなことになるのは御免だ。私はまだ、ガンダムへの逆襲を果たしていない。まだ飛ばねばならないのに。 ああ、そうか。飛んだところで、もう、私の隣に、お前はいないんだな。 男が、銃のグリップを握りなおした。以前の穏やかで柔らかい微笑みはどこにもない。冷徹な裏切者がそこにいた。愛していたのだ。そう気付いた。取り返しがつかないくらいに、この男を深く愛していた。いざとなれば親をも殺す覚悟で軍に入った私が、怪我を負わせることすらできないほどに。 「………!!!」 追っ手だ。数人の喧騒と足音が背後から迫ってくる。ここで撃たなければならない。どうしようもない、憎い、愛しい、悔しい、くるおしい。ころしたい。ころしたく、ない。 「撃てないの、グラハム?」 私は黙り込んだ。何か言おうとしても、言葉にならない。せめてこの手で。そう思っても、そのすぐ後ろから絶望が私を支配する。何一つ儘ならない。震える手で何ができる?断罪を望む男を撃つことさえできない。 男が、笑った。以前のように、穏やかな、そうして、少し困ったような顔ではない。酷薄な、―――別人のような顔だった。 「君は馬鹿だね。僕は、君を撃てるよ」 ぱん。 ぱん。 ぱん。 あの男が射撃が上手いとは正直思っていなかった。だから、腹を撃たれた時は覚悟していた。当たり所が悪いと、人はすぐに死んでしまう。それが分かっていたから。 だが奴は巧みに急所を外し、私を撃った。3発の銃弾を受けた私は、流石に昏倒して医療班に運ばれた。だが私は目覚めてすぐに、怪我のことも忘れて大声で笑った。全くお前らしくない。私は知っていた筈だ、あの男は本当はえげつなく、容赦の欠片もないのだと。私を殺す気ならば、いくらでも殺せた。頭を、心臓を、或いは腕を撃てば良かったのだ。奴はそうしなかった。私を生かしたのだ。 あの男が私を愛していたのか、それさえももう分からない。生かした意味がどこにあるのか、それさえも。利用価値があるなら、一体何処に。 ソレスタル・ビーイングに世界は変えられない。 だが、たった一人の男がいなくなっただけで、私の世界は随分とがらんどうだ。 PR 2008/02/10(Sun) 02:32:48
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