ガソダム00非公式ファンブログ
/女性向け注意/オンラインブクマ禁止/無断転載禁止/
ユニオン中心!ビリグラ。時々アレハレティエとハムサワ。
ネタバレ配慮皆無、週遅れなし。
!15禁!
キリ番踏んだぜ!って方は拍手かコメントでリクをいただければ最優先で何か書かせていただきますぜ旦那
18話を踏まえて… 『君に譲れないものがあるように、僕にも譲れないものがある』 『…強情だな』 『君ほどじゃないさ』 こちらに向かって銃を構える金髪の男は、軍人だなんて思えない程ずたずたでぼろぼろな顔をしていた。懐に入れたものに全幅の信頼を寄せるのは、止した方がいいって何度も言ったのに、男のその性分は治らなかったと見える。あのくせっ毛に触れることももはやないのだろう、そう思うと無表情に繕った仮面が崩れそうで、直ぐに白衣の懐から銃を出してゆっくりと構えた。 「何故だ」 搾り出すような低い声で男は言った。そんなにも動揺している男を、初めて見る気がする。 「何故って。そんなこと聞かれても困るなあ。元々こうなることさえ想定した上でユニオンに潜り込んだんだよ、僕は。君こそどうしてそんな顔をしているんだい」 茶化すように笑って見せる。男は音がするほど歯を食いしばり、何かを耐えているようだった。銃を持つ左手が僅かに震えている。そんなんじゃ外してしまう。急所を外されたら苦しむばっかりだから嫌だなあ、などと考えていると、ラグナからの通信を告げる電子音がした。弾かれたように男が身体を強張らせる。 「撃たないのかい?」 「…っ…私にお前を撃てというのか!?」 それが僕の至上の幸せだと言っても男にはきっとわからないだろう。叶わぬ事と思ってはいたが、それでも少し残念だった。この男に殺されるなら本望だと、ずっと思っていた。そうして消えない憎しみと傷痕を遺して逝けるならと。 「撃たないと君も処分だろう。ここまで僕を追い詰めておいて、取り逃がしましたじゃ済まされない」 「分かっている…っ」 「じゃあ撃ちなよ」 目の前のエース・パイロットは、いつもきらきらと輝かせていた目を哀しみや困惑や憎悪や、それから少しの愛で、ぐちゃぐちゃに曇らせている。その湖水みたいな眼が好きだった。真っ直ぐに僕を射抜き、断罪して欲しいとずっと願っていた。 「追っ手が来るよ、グラハム」 久しぶりに、その名を声に出した。この日が近づくにつれ、故意に呼ばなくなっていた名だ。どうしてと、訊いてくれればよかったんだ。変なところでとても臆病だから、訊けなかったんだろう。僕にスパイの嫌疑がかかっていたのは知っていただろうに。 「どちらかが撃たなきゃならないんだよ」 でなければ二人とも死ぬだけだ。この男の死に僕以外が関わるなんて許せなかった。不快だ。だったらすべきことは一つなのに、僕もまた、踏み出せずにいた。全く、どこまで甘くなったのだか。この男との恋でそこまで丸くなってしまった自分に心底驚いてしまう。ただのサンプルだった筈だ。何時の間に、こんな理解不能な感情を抱くようになったのだろう。僕は少しの感傷と、哀れみと愛、それから懺悔を込めて、グリップを握りなおした。 僕が拳銃を扱えるなんて、意外でしょう、グラハム。この銃弾に、僕の全ての愛を込めるよ。そうしてそれを撃ったら、僕はその愛を手放す。だから君もどうか。 「………!!!」 追っ手だ。もう時間がない。スローネが迎えに来ている筈だから、僕ももう行かねばならなかった。 「撃てないの、グラハム?」 男は沈黙していた。相変わらず震える手で銃を構えている。全く、本当に愛おしくて――心底馬鹿な男だ。目撃者がいるなら丁度いい。見ているといい、君たちのエースが撃たれる様を。そこにいる男は無実で、僕だけが咎人だという事実を。 「君は馬鹿だね。僕は、君を撃てるよ」 ぱん。(さよなら) ぱん。(ねえ、どうか) ぱん。(ぼくをゆるさないで) あいしていたよ 僕の大事なエースは、真っ赤な血を流して倒れた。呻いているその姿を顧みることは出来ない。轟音が鳴って、スローネアインが背後の窓から目視できた。拳銃で窓を割ると、ガンダムのアームが伸びてきて僕の目の前に差し出された。そこへ乗り移ると共に振り返り、追っ手に牽制の意味を込めて発砲する。一瞬だけ血の海に沈む金色が見えた気がしたが、目を伏せて視界から消した。硬質なその掌に状態を伏せ、掴まる。ゆっくりと保護するように掌が丸められ、アインは飛翔した。…正直酔いそうだが、乗り心地に文句は言うまい。 きっと、あの男は助かるだろう。急所を外して撃ったから。全く、僕らしくないね。まだ指が震えているなんて。 ソレスタル・ビーイングに世界は変えられない。そんなことは分かってる。 それでも、僕の世界は変わる。僕にも、譲れないものがあるんだ。 PR 2008/02/10(Sun) 03:01:48
この記事にコメントする
|