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せっかくリクエスト頂いたのにアップが遅れて申し訳ないです…! 「インスピレーションだな」 そいつは事も無げにそう言って薄いコーヒーを飲み干した。その表情は真剣そのもので、茶化したり嘲ったりする様子はない。それが癪に障るのだ。こうまでして突っかかっていっているのに、奴は全く動じる様子を見せない。腹が立った。自分など取るに足らない存在だと思われているようで。 「流石は大尉殿、エースの秘訣は自分で掴めと仰りたいんですかね」 皮肉っても彼は肩を竦めるばかりだ。本当のことさ、と前おいて、コーヒーのカップをデスクに置く。MS格納庫が見渡せる狭い控え室、その窓から彼は我らがオーバーフラッグスの機体を見つめている。ガラス越しに目が合うと、彼は少しだけ笑った。 「経験や反射神経はもちろん必要だ。だが前提条件であって、一番重要なものではない。肝要なのはインスピレーションだと私は思うよ」 金色の髪がふわふわと跳ねている。俺はそれを何とはなしに眺めながら、この髪が彼をよけい童顔に見せているのだろうと思った。俺のようにストレートだったなら全く印象が違うだろう。5フィートとちょっとの身長がこの基地内では標準か少し小さい部類に入るのもその要因か。ともかく彼は小さいエースだった。 「なら、この能力差は埋まらないって言いたいのか」 「そうは言っていない。私とジョシュア、君の腕は然程変わらないと思っているんだが、…そうだな、タイプが違うだけなんだろう、恐らく」 「気休めだ」 俺が会話を切ると、彼はまた大仰に肩を竦めた。 3つの国家郡が莫大な資金及び軍事力を費やした作戦が間も無く行われる。我々にはさぞかし名誉な役割が回ってくることだろう。そうして何人かは華々しく散るだろう。あの訳の分からない機体を手に入れる為に。できるなら生き延びて階級を上げたいと思った。俺は力も名声も地位だって欲しい。ステレオタイプかもしれないが、手に入るものは何だって欲しいと思った。零れ落ちていくものの方がいつだって多い。 「どうした?」 気付くと背後にあのいけ好かない上級大尉が立っていた。気配がしなかったのは流石だ、だが全くもって癪に触る。どうして一番人に会いたくない時に一番会いたくない奴が現れるのだろう。運が悪い。舌打をして前に向き直った。甲板からは、真っ黒な夜の海と、隣をゆく別の空母、それから星空が見えた。アラスカの空はもっと澄んでいたし、海は黒々として、風は切るように冷たかったな、と思い出す。気付くと奴はずうずうしく隣に陣取り、手摺に寄りかかりながら白手袋を取り、懐からドーナツなど取り出してていた。…この男に情緒とか緊張感とかいうものはないのだろうか。いつだってスマートでいたい男かと思っていたので正直げんなりする。全く調子を狂わされてばかりだ。 「食べるか?」 「………誰がそんな油っこい菓子。カロリー過多になる」 「君が黙っていればバレはしないさ」 快活とはこういうものなんだろうか。すかん、と抜けた青空をイメージさせる笑顔だった。相変わらずいけ好かない奴ではあるが、何故こいつが部下に心酔されるのかは、少し分かった気が……するか、畜生。奴はパッケージを開けてドーナツを頬張った。その手が操縦桿ダコにまみれているのを見て、少し驚く。俺でさえそこまでゴツゴツした手をしてはいなかった。インスピレーションだと?嘘をつけ。こいつは努力で飛んでいるのだ。それが分かってやはり妬ましかった。努力。自分のものではまだ足りないというのが信じられない。不意に、奴が星空を見上げた。ドーナツはまだ半分残っている。 「空で死ぬなら本望だが、私とて残していくものに対して申し訳なく思うこともある」 突拍子も無い話だった。確かドーナツとカロリーの話をしていた筈だ。それが突然、聞いたこともないような殊勝な声を出すのだから驚いた。知らず眉根を寄せる。会話を続けるのは正直望むところではないが、この男の弱みかもしれないと思うと気になった。 「何の話だ」 「ドーナツの話だよ」 「…意味が分からない」 「最後の晩餐というやつだ」 縁起が悪い、とは思わなかった。明日の大規模演習は全く前例がないものだ。ガンダムという共通目標がある限り協力体制は崩れないだろうが、言語も理念も利益も違う国家郡のことだ、どこかで問題だって起きかねない。そもそもガンダムという機体相手にどれほど遣り合えるのかが未知数だった。何せこの目の前の男しかサンプルはいず、その男がこの軍で規格外なのだからデータだってそこまでアテにはできなかった。聞けば、一瞬で蒸発するようなバズーカを持つガンダムも存在するという。そいつに巻き込まれたら、いくら俺でもタダではすまないだろう。この男も分かっているのだ、絶対の勝利などありえないということを。 「自信家のあんたらしくないんだな」 「あいにくと、私はロマンチストなのさ」 彼はドーナツを平らげると、空き袋をポケットに突っ込み、大きく伸びをした。仮眠明けかもしれない。寝起きというのはどうしたって気が緩むものだ。そう思うと、以前問いかけたことの答えが急に訊きたくなった。 「…上官を殺したというのは本当なのか?」 「殺した、と言うならそうかもしれない。私は殺したのだと思っている」 失望を覚えた。…否、そもそも期待などしていたはずも無い。なのに、急に身体が冷えていくような感覚が襲ってきた。目の前の金髪が色あせて見える。 「弁明も贖罪も意味がない。私は生きなければならない。飛ばなければならない」 金髪がふわり、揺れた。彼の湖水のような目が此方を見ている。正しさを凍らせてはめ込んだみたいな目だ、と思った。何が正しいのかは分からない、けれど彼は確かに正しかった。 「だから、戦場で汚名を晴らすと言った」 簡潔に結ぶと、彼は好戦的な目で笑った。俺はそれが以前より嫌いではないと思った。そう、全ては戦場で決まる。俺の価値も、地位も名誉も全て。だったら戦場で奴に勝つしかないのだ。 「ふん、ようやくあんたらしい顔が見られたな。そうでなければ張り合いがない」 「おや、君もようやく本調子になったようじゃないか。センチメンタルになるにはまだ早いぞ、ジョシュア」 奴は皮肉気に笑ってこちらを見た。 「グラハム・エーカー、あんたやっぱりムカつくぜ」 「残念だ、私は君を気に入っているんだが」 心底残念、という顔で言うので、俺はやっぱり腹が立って、何も言わずに甲板から船内に入り、入り口を乱暴に閉めた。 そうだな、この作戦から帰還したら、その手のタコの作り方とドーナツの君の話でも訊いてやるさ。その前に俺がガンダム鹵獲の先鋒を切って、俺こそが隊長格だと認めさせてから、じっくりとな。 PR 2008/01/24(Thu) 13:05:54
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