ガソダム00非公式ファンブログ
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ユニオン中心!ビリグラ。時々アレハレティエとハムサワ。
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バレンタインも近いので恥ずかしいらぶ甘を、と思って
…いっそベタベタで甘々にしちゃる!と思ったらやりすぎましたサーセン ハムサワ現代パロ。【madly in~】の続編。 最近コーラのことを考えるとどきどきします。病気でしょうか← 終電にギリギリで滑り込むと、外の気温と酷い落差の熱気がパトリックを包んだ。酒の匂いを漂わせている者が多い。彼は重い鞄を抱えなおすと、扉の方を向いて身体を落ち着ける。駅員の言葉と共に強い力でドアが閉まった。窓の部分に額を押し付けると、随分疲れた顔の自分が映っている。赤茶の髪はぱさぱさと荒れているし、いつもは生命力の塊のような目にも覇気がない。ここ3日程、大口の新規契約の為に奔走していたからそれも仕方のないことかもしれなかった。先日、有能な女性が上司になったことで職場の雰囲気が以前より格段によくなり、張り切りすぎたのも要因かもしれないが。 パトリックは小さく溜息を吐いた。窓が白く曇る。そのガラス越しに、外の冷気が伝わってきた。二月ももうじき半ばになる。そういえば今夜は雪になると、同僚の誰かが言っていたことを彼は思い出した。降り始める前にマンションまで辿り着ければいいのだが。そこまで考えて、一気に気分が沈んでしまった。ことは、今日の朝まで遡る。 昨日も遅くまで仕事だったパトリックは、出勤ぎりぎりまで眠っていた。同居人であるところの、金髪の男――グラハム・エーカーも、ここ最近の彼の疲れぶりは承知していたので、眠らせてくれていたらしい。家を出る時間の30分前に揺り起こされ、目を開けたそのすぐ傍に、多少年齢よりも若く見えるものの整った造りの顔があった。パトリックは、気付くと目の前の金色の後ろ頭を優しく、だが有無を言わさない素早さで引き寄せ、あろうことかその唇を奪っていた。グラハムが習慣にしている朝一番のコーヒーが僅かに香り、パトリックはすん、と鼻を寄せた。グラハムの身体からは、他にも朝食らしい匂いがして、それがとても快かった。もう一度、柔らかく唇を重ねた。 「はよ…」 短い挨拶を終え、グラハムを見つめたところで、ようやく完全な覚醒をした。パトリックはその美形のどアップにたいそう驚いて、自ら引き寄せていた頭を突き飛ばし、ベッドの中を壁際まで後退した。グラハムはと言えば未だ茫然自失という態で、突き飛ばされたそのままにぺたりと尻餅をついている。しばらく2人は無言だった。 「わ、悪い、俺、寝惚けて」 先に我に帰ったのはパトリックだった。動揺したままに急いでクロゼットから着替え一式を出して鞄を引っつかみ、バスルームに飛び込む。最短記録と思われるカラスの行水でシャワーを終え、髭を剃り歯をおざなりに磨くが早いか、髪を乾かすのもそこそこに家を飛び出していた。自分がしたことが信じられなかった。 確かに疲れていたし、寝惚けてもいた、それはパトリックも自認するところだ。だが、その衝動は決して、それだけで沸き起こったものではなかった。成り行き上、身体は何度も重ねた仲だったが、それは云わばスポーツのようなものであって、決して情を交わすというような色っぽい行為ではなかった。愛しているとも好きだともお互いに言ったことはないし、まして行為以外の時にキスやハグなどしたこともない。その、何時の間にやら定着していた距離感を、パトリックは壊した。だがそれが、ただの事故ではないとパトリックには分かっていた。 あの金色の癖っ毛を梳くのが好きだ。翡翠色の目が好きだ。ビスク・ドールのような肌も、ばら色の頬も、フルーツみたいに美味しそうな唇だって。そんな容姿なのに中身がひどく男前なところも、不遜な態度も偉そうな口調も、稀に見せる人懐こい笑顔も。全部ひっくるめて、どうやら自分は相当気に入ってしまっているらしい、とパトリックは認めた。 最寄駅の駅名がアナウンスされ、目の前の扉が開く。その直前にガラスに映った自分の顔は、すっかり恋に迷う男の顔だった。 そんな風に自覚してしまった後だったから、マンションには帰り辛くて仕方なかった。今朝冗談にしてしまえれば良かったのかもしれない。だが何も言わず飛び出してきてしまったのだから、如何な鈍ちんのグラハムといえどパトリックの気持ちに気付いたかもしれない。或いは、やっぱり鈍ちんはどこまでも鈍ちんで、彼の行動を不審に思って怒っているかもしれなかった。どちらにせよどんな顔をして帰ったらいいものか分からない。改札を出、ぼんやりと立ち尽くした。パトリックの脳裏を、あの暖かいマンションの部屋、そこで偉そうに笑っているグラハムが過ぎる。スポーツのようになんの柵もなかったあの行為も、パトリックに自覚が芽生えた今となってはそのまま続行と言うわけにも行くまい。そもそも、ルームシェアさえどうなるか分かったものではなかった。帰ったら部屋がもぬけの空だったら、などと考えたらぞっとした。 一歩、足を踏み出す。二歩。三歩。次第に早歩きになり、遂に走り出した。重い鞄を脇に抱え、革靴を鳴らし、コートを靡かせ、白い息を吐いて、走る。どんな顔を見せるかなんて、その時考えればいい。今は、グラハムに会いたい。雪の降る前、ひんやりとした空気を裂くようにしてパトリックは走った。 マンションに着くと、鍵を忙しく取り出してエントランスを抜け、エレベータで7階まで。鍵を突っ込んでドアを開けた。 部屋は真っ暗だった。 一瞬で物凄い不安に駆られて、電気を点け、グラハムの自室へ駆け込む。いつも通り整然とした部屋だ。一気に気が抜けたパトリックはその場に座り込んだ。どうやら、即日出て行かれるという結末は回避できたようだった。だが、それにしても帰りが遅い。いつもは自分より早く帰っているグラハムが、終電を過ぎても帰ってこないなど、ありえないことだった。再び不安が襲い掛かってくる。一体何が――― 「人の部屋に無断で入るとは感心しないな」 「ぉわっ?!」 背後から聞きなれた声がして、パトリックは飛び上がった。振り返ると、ドアに凭れて腕を組んでいるグラハムがそこにいた。呆然とその姿を見つめ、のろのろと立ち上がる。 「なん…で」 「何故も何も、ベランダで煙草を吸っていただけだ。使わない部屋の灯りはいつも落としているだろう」 言われてみれば、エアコンの音が微かに聞こえている。玄関で冷静になっていれば、グラハムの靴だってあったのだろう。相変わらずの情けなさに、パトリックは眉尻を下げて俯くと、大きく溜息を吐いた。なんとも決まらない。 「全く…君はいつもそうだ」 その声が笑みを含んでいた気がして、ゆっくりと顔を上げる。グラハムは、見たこともないような柔らかい笑みを浮かべ、パトリックを見つめていた。その顔にシャッターをきるみたいに、ゆっくりと瞬きをする。グラハムの、意外に無骨な手が伸びてきて、パトリックの頬に触れた。暖かい手だった。 「今朝も、あんな風に出て行くことはあるまい。生娘でもなし」 「きっ…」 「ようやく気付いたかと思ったら、あの慌てぶりだ。君が出かけてから散々笑わせてもらった」 「きづっ…」 「私のことが好きだろう?パトリック」 傲岸不遜な笑顔で。グラハムはそんな風に言うと、朝、パトリックがやったように、とても優しいキスをした。 「私はずっと君のことが好きだった。でなければルームシェアなど持ちかけるものか」 金髪の美青年は、まるで内緒話をするように、小声でそう告げる。あまりに近くに顔があるせいで、パトリックはその吐息の一粒一粒に甘く酔わされている気分になった。こうやってずっと酔わされていた、きっと、ずっと。鈍ちんは、どうやら自分らしい、とパトリックはようやく気付いた。そうして、愛を手にすることに臆病でない彼は、ゆっくりとその手を伸ばす。 「お前が、―――」 金色の癖っ毛に隠れるような、小さな耳に囁くようにすると、グラハムは満足そうに、そして少し照れたように笑った。 この年初めての雪が舞った夜のことだった。 PR 2008/02/12(Tue) 02:35:04
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